TBSドラマ「わたしを離さないで」は、2005年にカズオ・イシグロ原作による「Never Let Me Go」を元に製作された森下佳子脚本の金曜ドラマです。
今回は、このドラマを見た感想や疑問に思ったことを書いてみたいと思います。
ドラマ「わたしを離さないで」
このドラマは綾瀬はるかさん、三浦春馬さん、水川あさみさんと言う豪華キャストで構成された話題作となっていますが、内容はとても重く暗いイメージのストーリーです。
彼らはいわゆる「クローン人間」で、生まれた目的と言うのが
臓器を提供するためのスペアパーツ
としてこの世に存在していると言う恐ろしいお話なのです。
その中でも、それぞれの人間関係や葛藤などが描かれたドラマとなっているのですが、ある意味
突っ込みどころ
がたくさんあって疑問があれこれ湧いてきてしまいます。
時代はいつなのか
最初の疑問は
このストーリーの時代はいつなのか?
と言うことです。
話には関係ないとも言えるのですが、関係あるとも言えるので考えてみたいと思います。
現在でもクローン技術と言うものは存在するので、現代であると言えなくもないです。ただ、当然ながらクローン人間は禁止されているので作ることは出来ません。また、クローン生物は寿命が短いとも言われており、ドラマにあるような数十年と言う期間にわたってクローン人間が生きていけるのかもわかりません。
本が出版されたのが2005年ですから、その近未来と言うことを想定すると丁度今頃であるとも言えます。ドラマに出てくる人やモノや風景などは、現代に置き換えた設定と言うよりほかありません。
しかし、時代と言うよりは人々の倫理観や政治システムなども私たちとは別な世界のお話なのかな?と解釈しています。
クローンが認められた社会なのか
そんな時代が来るとは到底思えませんし思いたくもないですが、このドラマでは少なくとも
クローン人間が認められた社会
であると考えられます。
「陽光学苑」と言う施設は認知されたものでしょうし、現実に提供と言う事業?が行われていると言うことは需要があると言うことですから、ドラマ社会では医療技術の一部としてクローン人間をスペア化するシステムが確立されているのでしょう。
第5話で「のぞみが崎」に行った恭子と友彦が、お店の主人(大友康平)から失くしたCDを譲ってもらうシーンでも、お金を払おうとして出したカードを見た主人が
「あんたたちのやっていることに比べたら・・・」
と言ったセリフがありました。それは一般に認知されていると考えることができます。
しかし一方で、第6話の真実(中井ノミエ)が街頭で自分の主張をする場面では、一般の人たちは何が起きているのかわからないような描写でした。
それらを考え合わせると
システムとしては合法化されているが、実態は伏せられている社会
であると解釈するのが妥当かな?と思いました。
スペアなのに何故教育するのか
一番不思議なのは
クローン人間=臓器のスペア
である彼らに対し、なぜ教育をするのか?と言うことです。
陽光学苑では洗脳教育が行われていると思われますが、外の世界と接点を持ってしまえば教えられたことの不思議さに気付くものです。また、どう言う教育であれ、ある程度知識を得れば自我も芽生えれば主義主張も生まれます。それ自体がかつての奴隷や人権運動の根幹にあったエネルギーなのですから、そのような事態になることも容易に予想がつくはずです。
やはり、この提供と言う事業システムが
極めて高度に隠匿されたシステム
であるがゆえに、提供者の管理や看護などを
なるべく自前で行う必要がある
からではないでしょうか?外部の人間が関わるのは十分に調査された極々一部の人だけで、絶対的な恐怖と高潔な使命を与えながら、その世界を構成しているのだろうと思います。
これまでの感想
ドラマも第6話まで進み、次回からは最終章に突入します。
これまで見てきた感想としては
暗いドラマだ
と言うのが第1点。話の内容は
クローン人間であろうが普通の人として描かれ、そこに違いはない
と言うことが伝わってくるのですが、置かれた状況が過酷すぎて見ていられない気分になります。
もちろん、水川あさみさんの憎まれ役などは秀逸と言って良いほどで、ホントに嫌な女だと思わせてくれる演技力は素晴らしいの一語に尽きます。また、それに振り回される綾瀬はるかさんの何とも言えない表情も見どころではありますが、全体を通した流れと言うか、空気感がホントに重苦しい感じで辛くなってしまいます。
このドラマを見て何を感じるかは人それぞれだと思いますが、考えさせられることが多すぎて現実感がない・・・と言うのが正直なところでしょうか?
ドラマはもう少し続きますので、最後の結末まで見届けたいと思います。